研究概要 |
平成9年度は,それぞれの多重コンピューティング方式に関して,具体的な応用システムの設計を行い,その有効性を検討した. 1.「多値集積システム」:非2進数系/多進数系に基づく各種算術演算回路(高基数除算回路,高基数CORDIC演算回路,画像認識用再構成型算術演算回路)について,まず通常の2値論理回路に基づく設計を行った.その結果,アルゴリズムの多進数化により,大幅な演算latencyの消滅が達成されることが確認された. 2.「周波数多重化集積システム」:正弦波および直交ディジタル系列を情報担体とする完全並列型ニューラルネットワークを設計した結果,直交ディジタル系列を信号キャリアとするほうが,コンパクト性と高速性に優れることが判明した.今後,符号分割多重化方式による完全並列型ニューラルネットワークの実現を検討する必要がある. 3.「符号多重化集積システム」:M系列と呼ばれる擬似ランダム系列を情報担体とする基本的な集合論理回路を1.5μmCMOS技術により設計した.この結果,配線を増加させずに並列処理が可能であるとともに,M系列の擬似ランダム性による高信頼化が可能であることを確認した. 4.「多波長光電子集積システム」:MCMマルチプロセッサ用多波長光インタコネクションネットワークの設計手法を確立するとともに,その実現の鍵となる波長検出ICを傾斜推積型誘電体多層膜フィルタを用いて実験的に試作した.今後,使用可能な波長数等に関して定量的評価を行う必要がある. 5.「分子コンピューティングシステム」:電気化学的手法に基づく酵素トランジスタの基礎実験を行い,酵素トランジスタが原理的に可能であることを確認した.
|