研究概要 |
平成10年度は,それぞれの多重コンピューティング方式に関して,応用システムの詳細設計を行うとともに,試作実験および計算機シミュレーションを通して,その有効性を定量的に評価した. 1. 「多値集積システム」:非2進数系/多進数系に基づく各種算術演算回路の試作・評価を行った.冗長複素数乗算回路,再構成型算術演算回路については,フルカスタムASICによる試作を実施し,さらに,高基数除算回路,高基数CORDIC演算回路に関しては,論理合成に基づく設計を行った.これにより,演算latency・配線長・素子数・消費電力などの削減が可能であることを明らかにした.さらに,電流モード4進SD数加算器の試作を通じて,多値集積回路化の可能性を示した. 2. 「周波数多重化集積システム」:正弦波および直交ディジタル系列を情報担体とするホップフィールド型ニューラルネットワークを設計し,配線量削減の効果,ならびに多重度と処理速度の関係を明らかにした. 3. 「符号多重化集積システム」:M系列を情報担体とする集合論理基本回路をCMOS双方向電流モード回路技術により試作し,配線量削減の効果を評価した.さらに信号線のS/N比とエラーレートの関係を明らかにした. 4. 「多波長光電子集積システム」:試作した波長検出ICの波長分離特性を評価し.原理的に8〜16波長程度の多重度を実現可能であり,これにより光インクコネクションネットワークの面積的複雑さを1/64〜1/256程度に減少できることを示した. 5. 「分子コンピューティングシステム」:酵素トランジスタの微分方程式モデルを用いたシミュレーションにより,拡散結合された酵素トランジスタによるパターン情報処理および最短経路探索が可能であることを示した.
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