研究概要 |
制御不能流の基礎となる理論体系を構築するという面からは,最適化間題として定式化可能な制御可能な流れを扱う今までの流れの理論体系とは相反する内容を含む流れ問題の定式化を厳密に行った[伊理,山口・伊理].すなわち,交通,通信,ジョブといった実体としての流れが本来持っている性質の中で,すでに生起した流れを変更することは困難である,逆向きの流れの相殺はできない,といったことに注目し,そのような性質を持つ流れの定義を,従来の流れの理論に匹敵する数理的な厳密さをもって与えた.そして基本的な概念である閉路,二端子流れ,カット,極大流等の定義といくつかの性質を明らかにし,それらを用いて,回路網の容量と冗長性,大域的な渋滞と局所的な渋帯,といった新しい流れの理論に特有な概念を導出した. また,昨年度に引き続き都市内の交通問題に焦点をあてた応用に関する考察を進めた[田口].すなわち,一定の地域に住む人の任意の対の間に確率的に交通が発生するとし,渋滞を起こさないために必要十分な交通容量を確保しながら居住面積を定めるという配分モデルを考察した.そして,少数の大規模なビルを建てて人口を集中させる場合と.多数の小規模な建物を建てて分散をはかる場合とに対して,人の活勤度合,ビル内交通システムとビル間交通システムそれぞれの能力などをパラメータとして,上記の二つの場合の優劣を比較した.また,均質な集団だけでなく,活動度合いが異なり互いに行き来のある複数の組織が存在する場合に対しても,考察を進めた.
|