1996年度には、交通問題に重点をおいて、データ収集、文献調査ならびに理論の部品となる概念の確立、法則性の発見などの基礎的研究を進めた。データ収集に関しては、主要道路ネットワーク、都市地域の土地利用データ等を入手し展開した。これらのデータは、理論展開の実証に用いたほか、従来理論に沿って施設配置問題、経路探索問題、地理情報システム構築等を扱うことにも利用して、新理論の結果と比較するための基礎資料を整備した。新理論の研究に関しては、都市内交通を想定して、適当な交通の発生モデルのもとで、渋滞を起こさないために必要な交通容量を確保しながら居住領域を定めるという配分問題を考察した。また、交通ネットワークの全体としての機能を損なうことなく各リンクの容量を減少させる「ネットワークのスリム化」という新概念を導入し、関連する算法の計算複雑性を検討し、この概念が大規模システムに対する最適な投資配分を考える際に有効であることを指摘した。 1997年度においては、理論体系をより厳密、広範にすることに努めるとともに、渋滞のパターンと流れのパターン、それぞれの半順序集合としての準同型対応、また渋滞により定義されるネットワーク自身の強連結構造が定める半順序構造との関係等を解明した。 応用面では、ビル内交通システムとビル間交通システムとに着目して、小規模建物を多数分散して建築する場合と少数の大規模建物を建築する場合との優劣比較も行った。1998年度は、研究の最終年度でもあるので、それまでの研究を一層深め精密化するとともに、3年間の研究成果の総纏めと正式の発表を心掛けた。
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