研究課題/領域番号 |
08458098
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
島崎 邦彦 東京大学, 地震研究所, 教授 (50012951)
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研究分担者 |
上田 和枝 東京大学, 地震研究所, 助手 (40151790)
佐藤 比呂志 東京大学, 地震研究所, 助手 (00183385)
纐纈 一起 東京大学, 地震研究所, 助教授 (90134634)
岡村 真 高知大学, 理学部, 教授 (10112385)
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キーワード | 東京 / 地層抜き取り / 安政江戸地震 |
研究概要 |
江戸川区江戸川小学校付近の旧江戸川河底に見いだされた断層状の地変の成因を解明するために、1994年に採取された河底試料および今年度当科研費により採取された試料の詳細な検討結果と、付近で行われている他機関によるボーリング結果とを比較した。河底では最上部層が粗粒砂からなり、断層の北側で1m20cm、南側で40cmの層厚を持ち、80cmの上下ずれの可能性を示す。約8m下まで砂〜シルト層で、地層の対比からは80cmの上下ずれがほぼ保たれていると見られる。沖積層の基底は十数〜二十数メートルの深度にあって、埋没波食台が認められる。この埋没台地の縁が断層状の地変を生じた部分を通る可能性があり、不等沈下による地変の可能性が考えられる。一方、この地変が活断層のずれによるものとすれば、江戸末期/明治期に東京に被害を与えた地震と考えられ、1855年安政江戸地震、1894年東京湾北部の地震が候補となる。最近、1894年の地震は地震記象からやや深い地震であるとの見解が出されており、その可能性は低い。1855年安政江戸地震については、史料を整理して震度分布や液状化地域の分布をまとめた。地質調査所の結果によれば、旧江戸川河底の地変付近には埋没活断層の存在が示唆されており、その延長部は江戸川から荒川までN80Wの方向に延びる可能性が指摘されている。一方、1994年の音波探査からは荒川までN65Wの方向に延びている可能性が指摘された。これらの走向を用いて横ずれ断層の西端が荒川まで延びている場合の強震動を予測し被害史料との比較を試みた結果、現江戸川区など江戸東縁部の被害史料の不足が問題点となることがわかった。一方、断層状の地変そのものの特定には、代表者らが考案した地層抜き取り(中田・島崎,1997)を行うことが最も効果的と考えられる。河底の試料採取のため、油圧による圧入方式を採用することとし、地上テストを行って地下10mまでの地層を、堆積構造を乱すことなく採取することに成功した。今後河底からの試料採取を試み、この問題の決着をつける予定である。
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