本年度は、計画初年度として資料収集、基礎理論の展開を図った。各研究課題における実績概要は以下の通りである。 (i)気圧配置より見た気象現象の異常性評価:北半球での500hPa高度分布を入手し、気圧分布のパターン分類を適用した。緯度経度10゚毎のデータであるが、30年分の分類に際しては、基準地点の設定に基ずく評価地点の減少が必要であった。 (ii)水供給一利用過程を考慮した渇水シミュレーション:渇水シミュレーションには流域モデルでの詳細な水循環と回帰式のような大略的な数理計画モデルが存在する。ここでは、気温、降水量、流量の関数とする数理計画モデルを同定し、渇水時の水利用変化を推定した。かなり良い相関係数でのモデル同定が可能であった。 (iii)パターン分類での気象・水文現象間の相関性:日本全国主要地点(14カ所)の降水記録を入手し、パターン分類を適用した。ここでは、多雨年と少雨年が区別できるような評価関数を提案した。前述の分類された気圧分布と的中率の概念を利用したパターン間の相関性を取り、相関の高い組み合わせにおいて、ファジイ推論による気圧から降水量の予測を行った。さらに、ニューラルネットワークを構築して、日本の任意地点での降水量の推定を図った。 (iv)渇水確率による被害のマクロ経済的評価:多変数自己回帰モデルを仮定して、気温、降水量、流量、蒸発散量を説明変数とした流量予測を行った。その成果を基に、温暖化シナリオに対して、流出量の変化を推定すると共に、渇水確率の変化を算定し、等価偏差法によって、被害額を求めた。
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