2年間の研究で、パターン分類手法の一つであるISODATA手法のプログラム化、少雨事象に適切な分類目的関数の設定を行った。加えて、分類された集合を利用して、形状を考慮した渇水確率の提案を行った。研究実績の概要は以下のとおりである。 i)気象学的な観点より日本の少雨現象に影響を及ぼす気圧、気温、海面温度分布の空間的特徴を整理し、ファジイ論値により画像としての類似性評価を可能とした。特に、気圧分布に関してはフラクタル解析でその特徴評価を可能とした。さらに、エルニーニョやチベット上空の分布など地域性を考慮した総合的評価を行った。 ii)日本の基準地点に対してGAを利用した分類手法を提案し、既存の気候区分にとらわれない気温、降水系列を考慮した分類を行った。分類された気温、気圧、海面温度の組み合わせを類似度で表示するファジイニューロ手法を導入して降水を求めた。 iii)任意地点の降水量は、推定された基準値天候水量よりニューラルネットワークにより求めるとともにネットワークの構造はGAの適用で決定された。 iv)渇水時には貯水池の役割が大きく、流入量予測が不可欠である。貯水池流入量を予測降水量、観測降水量、観測流量を入力要素とするニューラルネットワークで予測し、設定された操作ルールに対しファジイ制御を行い、実節水率を求める。 v)多地点同時マトリクスによる時・空間的相関性を保持した降雨、気温シミュレーション法を提案し、気候変動下での渇水シミュレーションを行った。これを渇水確率として定義し、等価偏差法による渇水被害評価を通じ、地球温暖化での被害額の推定を図った。 vi)形状の相違度(内部距離)が対数正規分布に従い、パターン内での発生確率とそのパターンの発生頻度の積和を少雨の発生確率として提案した。
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