研究概要 |
本年度の主要課題は新規に製作した実験装置を使用し、境界条件の影響の少ない条件下で光子加速に関するデータを得、現象の早急な詳細解明を行うこと、さらに、現存のマイクロ波源の一層の短パルス化を行うための技術開発を行うことであった。これらを用いて光子加速の基礎的な物理現象を明らかにすることであった。この目標に向かって、まず真空装置の大型化を行った。現存は長さ60cmであったが、今回あらたに1m長の真空装置をつなぐことが出来、合計1.6m長のプラズマ発生装置ができあがった。この結果、光子加速の本質的な原因と考えられていた、(1)強力なマイクロ波による電離の現象と、(2)入射電磁波の境界による強い反射が存在するために起きる定在波による現象との識別が出来るようになった。いずれの場合も約2MHz程度の光子加速の現象は発生するが、大きな違いは、高周波成分の発生(9GHzに対し,+6〜20MHzのド-タ波の発生)が顕著な場合(電離がない(1)の場合)と高周波成分の発生は顕著には現れない場合(電離を伴う(2)の場合)があることが明らかになり、現象の本質的な解明が出来た。高周波成分はアンテナ直前のプラズマが動重力により、押し出されることによるイオン波周波数程度の密度変動の発生とその密度変動により電磁波が偏重を受けたことによる周波数上昇(up-shift)であることが明らかになった。なお、レーザープラズマ相互作用を用いたレーザー航跡場加速の場合にも光子加速現象は発見されているが、このような詳細な現象の解明はレーザーを使用したのでは極めて困難であり、従来は報告例がない。本研究で始めて明らかにされた。 この現象は現在マイクロ波領域における高周波発生の機構として利用できる可能性が明らかになり、今後の応用も期待されている。
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