研究概要 |
1. プラズマの大規模シミュレーションの基礎である古典イオン系に対する分子動力学法において,電子による遮蔽を考慮した遮蔽クーロン力で相互作用する湯川系およびその混合物の特性を引き続き解析した。特に,混合物が外場の中におかれたとき,成分間に分離が起きる条件を明らかにした。次に,クーロン相互作用を大規模系に対して計算する方法として,高速多重極展開法が有効であるので,具体的なコードとして利用可能にするためのプログラムを開発した。結果として,古典系であれば10万程度の粒子を含むプラズマのシミュレーションが可能となり,界面を含むプラズマを粒子モデルにより微視的に解析するための方法が与えられた。 2. 電子系を含めたプラズマの量子力学的シミュレーションには,電子系を密度汎関数法により記述し,電子密度そのものを変数として扱う密度汎関数分子動力学法が大規模化可能である。具体的な対象として,液体金属領域にある水素プラズマをとりあげ,並列PCクラスターによりシミュレーションを行った。その結果,1000個程度の電子を含む系に対しても,実用的な計算時間でシミュレーションができることが示された。プラズマ相転移(圧力電離)より高密度側において,相転移点に近づくにつれ,電離度が低下し,電子による陽子の電荷の遮蔽が強くなる様子が,電子分布を可視化することにより明瞭に示された。また,この中に荷電数の異なる原子核が不純物として含まれる場合のイオン化の様子が調べられた。これはプラズマの状態を測定するためのプローブとなり得る。更に,密度汎関数分子動力学法の結果を第一原理シミュレーションにより較正するため,第一原理に基づく分子動力学法の開発も行った。
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