本研究においては、高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全評価に関連して、アクチノイドの地層での挙動を評価するため、地層中の有機分解縮合生成物(フミン酸)とアクチノイドの相互作用を検討する。フミン酸においては、アクチノイド等の金属イオンと相互作用する官能基が高分子骨格に固定されていることによる高分子電解質としての効果と、組成が不均一な混合物であることによる効果が重畳している。そこでまず高分子電解質としての効果を評価するため、典型的な高分子弱酸としてポリアクリル酸を選び次のような検討を行った。 (1)高分子有機弱酸の解離特性のモデル化:種々の平均分子量のポリアクリル酸の種々のイオン強度における滴定結果をもとに、その酸解離を記述するモデル式を導出し、解離度およびイオン強度に対して高分子酸の解離を良好に記述できることを確認した。 (2)ポリアクリル酸とNp(V)の相互作用:^<239>Npに対して溶媒抽出法を用いて、プリアクリル酸とNp(V)の見かけの錯生成定数を得た。得られた値は、フミン酸とNp(V)の相互作用について報告されている値と近いものであったが、本検討では均一な組成のポリアクリル酸を用いたので、定量的な評価が可能となり、高分子弱酸では見かけの錯生成定数は、解離度の増加と共に増加し、イオン強度の増加と共に減少することが判明した。 (3)^<237>Npの定量法の確立:フミン酸の組成不均一性(微量の強い錯生成官能基の有無)を評価するには、Np(V)の濃度を変化させる必要がある。このため、濃度の高い条件の検討の可能な^<237>Npを用いる目的で、そのα放射能を、娘核種の^<233>Paのβ放射能から区別して計測する波形弁別液体シンチレーション法を適用し、その測定条件を定めた。
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