研究概要 |
金属を水溶液から水銀陰極に電解析出させる電気化学的分離法は古くから知られているが、その対象は水溶液の電位窓の内部に電極電位をもつZn,Fe,Co,Ni,CuなどのVIa族からVIb族の元素に限られている。他方、アルミニウム・アルカリ金属・希土類・アクチナイド(以下陽性金属と呼ぶ)のイオンの還元には約-2V以下の電位が必要で、電位窓の外側となるため水溶液系での析出は困難と考えられてきた。しかし、本研究では陽性金属の電解析出が、電位窓の外部領域を利用した水溶液から可能であることを明らかにした。これを利用して水溶液電解によりアマルガムを合成し、熱分解によってウラン・ネプツニウム・ランタン・セリウムの金属を調製した。特に高放射性物質であるネプツニウム金属調製は国内で最初である。この金属調製の手法はその操作性及び管理など非常に簡便である。アマルガムの熱分解によって調製した金属はボタン状で得られることから、その取り扱い性に優れ、また金属調製率もほぼ100%の高い収率であった。 ICP発光分析(18元素)及び酸素、窒素、炭素の気体不純物分析の結果から、調製したウラン金属の純度は約99.99%であり、この金属は市販ウラン金属に比べ、格段に優れた純度をもつ。特に窒素と酸素はそれぞれ10ppmと2ppm程度であり、水溶液から調製した金属にもかかわらず満足のいく結果が得られた。また。ランタン、セリウムは、希土類金属の中でも特に化学的に活性な金属であるにもかかわらず、得られた金属中の酸素・窒素含有量は市販金属と比較しても遜色ない結果を示した。 本研究で明らかにした電位窓の外部領域における電解法は、従来の電気化学の対象外であり、今後電位窓の外部領域を利用する新しい分野への展開が期待できる。
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