研究課題/領域番号 |
08458118
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
関村 直人 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (10183055)
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研究分担者 |
岩田 修一 東京大学, 人工物工学研究センター, 教授 (50124665)
石野 栞 東海大学, 工学部, 教授 (70010733)
河西 寛 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (40010970)
岩井 岳夫 東京大学, 原子力研究総合センター, 助手 (30272529)
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キーワード | 照射損傷 / イオン照射 / カスケード損傷 / 組合せ照射 / 金薄膜 |
研究概要 |
放射線照射下で利用される原子力用機器材料の供用中特性変化を定量的に予測するためには、材料損傷の基礎過程に基づいた材料変化過程の評価が必要である。本研究では、高エネルギー粒子照射による結晶格子原子のはじき出し連鎖(カスケード損傷)から始まる材料変化をモデル化するために、異なる照射粒子あるいは照射条件を組み合わせた照射実験をデザインする。本年度は、第一段照射において全ての試料に同一量の欠陥を導入し、第二段照射において異なるイオンエネルギーでの照射を行い、電子顕微鏡で観察可能な欠陥クラスター顕在化の程度を明らかにする。この結果から、顕在化を起こすカスケードの影響範囲の一次はじき出しエネルギー依存性を定量的に評価した。照射試料は金薄膜、照射は自己イオンである。第一段照射によってあらかじめ導入したカスケード損傷構造が同じであったにも関わらず、第二段照射のイオンエネルギーによって、カスケード損傷構造の照射量依存性に違いが現れ、特に高エネルギーの場合は、カスケード損傷の重なり合いによって欠陥クラスター密度が増加したと考えられる。欠陥クラスターは、試料表面からイオンの最大侵入深さまで空間的に均一に分布すると仮定し、顕在化が起き始める際のグループ面密度から平均カスケード間距離を求めることができた。さらに、カスケードからの影響は等方的に広がり、全ての第一段照射による導入欠陥が同程度の影響によって顕在化すると仮定すると、求めた平均カスケード間距離はカスケードから顕在化を起こす影響範囲半径に対応する。顕在化を起こすカスケードからの影響範囲は一次はじき出しエネルギーが大きいほど広く、既に得られている金-銅規則合金の高速中性子照射による不規則相領域などと比較してもかなり大きい。このことから、顕在化ははじき出しの空間的重なり合いによって起きているのではないことが分かった。
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