ハイパー熱中性子の生体に対する照射特性及びハイパー熱中性子照射場の実現の可能性を実験と計算の両面から確認することを研究目的にしている。 平成8年度は、ハイパー熱中性子を発生させるために、散乱体の温度を上昇させる装置の一部である、高温散乱体、高温ヒーター(発熱体)、温度測定計(熱電対)を製作し、これらについて熱的な安定性及び安全性の確認を実施した。なお、装置の主要部の材質には、実験上の安全性の確保を優先する必要があることから、ステンレスに加えて、高温時の除熱性能と、強固でかつ温度制御性能を持つモリブデン等を要所に使用した。また最大温度も1200度(1600K)程度を出せるものとし、散乱体には安定性のある黒鉛を選んだ。 平成9年度は、対放射線性のケーブル、温度制御用流量計、組立架台を製作し、前年度分と合わせて装置を完成させ、熱的な安定性及び安全性の検討を実施した。その後、京大原子炉実験所にあるLINAC中性子発生装置を用いて、1200度までの高温散乱体からの中性子エネルギースペクトルを測定し、ほぼ予想通りの結果を得た。また、実験と平行して、製作した装置の具体的な体系に合わせた中性子照射場のハイパー熱中性子発生特性をシュミレーション計算により評価した。平成10年度に申請中の重水熱中性子設備での高温の散乱体を置いた特性実験に備えて、各種温度での実験と計算の比較の為の基礎データを収集した。
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