本研究の目的は、高断熱高気密住宅が従来型の住宅と置き替った場合に実現される省エネルギー量を求め、民生部門エネルギー消費における量的な抑制効果を検討すること、さらに、高断熱高気密住宅の普及が促進されるべき地域を気候・住宅数等の面から抽出すること、にある。平成9年度の研究実績は以下のとおり。 1)高断熱高気密住宅の冷暖房エネルギー消費シミュレーションの追加実施(担当:垂水弘夫) 平成9年度は、民生部門エネルギー消費量の算定に大きく影響する大都市を中心に、シミュレーション対象都市を追加した。仙台(III地域の太平洋岸)、名古屋・大阪・福岡(IV地域)の4都市である。 2)省エネルギーモデル住宅における有人環境下でのデータ取得(担当:久保猛志) このモデル住宅は平成9年度から社宅として使用されたため、生活者が存在する環境下でのデータ取得を行い、平成8年度の公開モデル住宅としての環境との比較検討を実施して、影響の顕れる生活行為、エネルギー消費用途を特定した。 3)高断熱高気密住宅の普及による省エネルギー量の推定(担当:垂水弘夫、久保猛志) 以上の結果求められた各地域の高断熱高気密住宅による省エネルギー効果をベースとして、各地域の住宅種類・住戸数・住戸規模・新設着工ペース等の統計データを含むエネルギー消費量算定モデルを作成し、住宅の高断熱高気密化による省エネルギー量を推定した。この結果、高断熱高気密住宅の普及が民生部門エネルギー消費に及ぼす量的効果が県別、また全国ベースで明らかとなった。さらに、戸建住宅の新築による建替えペースの早い県や寒冷地にある都道府県ほど、高断熱高気密住宅の普及要請順位が高いという成果が得られた。
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