研究概要 |
核融合炉で使用されているトリチウムの一部は、第一壁を初めとする炉壁材料及び燃料プロセスの配管材料などに吸着・溶解する.第一壁での燃料リサイクリング、燃料の有効利用及びトリチウム取扱いに対する安全性確保などの観点から、これらの材料に対するトリチウムの吸着・溶解量の低減化対策の開発研究が必要不可欠であり、固体材料中のトリチウム量及び濃度分布を非破壊かつin-situに測定するための技術を確立する必要がある。 トリチウムからのβ線と材料構成原子との相互作用により発生する制動X線は単調に減少する連続スペクトルであるが、材料表面に到達するまでに一部吸収されるために、スペクトル形状に変化が起こる.その変化の度合いは材料の構成元素の電子密度、制動X線の発生場所から表面までの距離及び制動X線のエネルギー等に依存する.従って、観測されるスペクトルは種々の深さからの制動X線スペクトルの総和となり、スペクトルの特徴はトリチウムが溶解している深さ及び濃度分布に応じたピーク位置及びその形状に表れる事になる. 本年度は昨年度の結果を踏まえて,トリチウムの濃度分布が不均一なPd及びZr等の金属試料用いて検討を行なった.その結果,本研究で使用した金属試料では,制動X線のみならず特性X線も観測され,トリチウム濃度の変化に伴って,制動X線スペクトルの形状が変化すると共に両者のスペクトル強度も変化する事が知られた.また,制動X線スペクトルの解析によって,表面から約100mum程度までのトリチウム分布の変化を推定可能である事が知られた.特に,特性X線スペクトル強度は数mum程度までの表面近傍の濃度変化に対して敏感であり,固体内トリチウムの評価に対して重要な役割をなすことが明らかとなった.
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