研究概要 |
名古屋市と愛知県による環境調査報告資料に基づいて,名古屋市とその周辺における大気メタンや一酸化炭素の濃度空間分布について研究を進めてきた。そこで得た作業仮説的な空間分布モデルが観測網の設定に依存しないことを確認・確定するために,また,一酸化窒素・二酸化窒素・二酸化硫黄などの大気メタン以外の観測資料解析によって推測していた地域の大気メタン分布について確認するために,空気試料採取地点を既存の環境調査用観測網を補うように選んだ。観測日として,一年で最も濃度が濃くなる秋季〜冬季の代表的な天候の数日を選んで,各観測日に3回(7:00,13:00,19:00)空気試料の採取を行い,同時に気温・湿度・風向風速などの気象要素についての簡易観測も実施した。 その結果,既存資料の解析から提出していた作業仮説モデルの大気メタン濃度分布が妥当であることが確認された。新たに明らかになったことは,濃度極大域では,風速の弱い夜間には特に高濃度になることである。また,これまで大気メタンの観測がされていない地域に,推測していた極大域が存在することが示唆された。 上記の分布は地表付近に限定されたものであり,3次元的な分布すなわち大気境界層内の分布について明かにすることが次の段階の研究課題となる。そこで,濃度極大域内の名古屋テレビ塔の4高度(0,40,60,100m)で試料採取を行い,高度分布についての予備的な観測も実施した。高度・時間断面図解析の結果,幾つかの興味有る結果が得られた。ほぼ全時間帯で発生源に近い地表面近くが高濃度で上方ほど低く,12〜14時間前後にほぼ全高度で極小となる日変化をしている。また日没直後から数時間後の高度60〜80m層とそれより上層ではメタン濃度の逆転がみられた。高度・時間分布の風の強弱による差異も明らかになった。
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