研究概要 |
天然起源の有機化合物であるフミン物質(フミン酸やフルボ酸)は,河川水・湖沼水・海水などに普遍的に含まれ、種々の有害重金属元素と負電荷錯体を形成する。その結果,各種元素の地球化学的挙動や水棲動植物に与える毒性が大きく変化するといわれている。さらにフミン物質は、水の塩素処理の際有害なトリハロメタンに変換され得ることも報告されている。フミン物質は,土壌の化学的・生物学的諸性質並びに肥沃性を大きく支配するため,その関連分野において数多くの研究がなされてきた。しかし水圏フミン物質は,その存在濃度が土壌に比べて極めて低く,土壌フミン物質と違った独自の濃縮・キャラクタリゼーションの方法論の開発が必要である。当研究室で開発したフローシステム浮選法は,ppm〜ppbレベルのフミン物質を試料の流路の中で共沈捕集し,同時に溶液から迅速に浮上分離する方法である。本法は大量の水試料が簡便に処理できるため,水圏フミン物質の有力な濃縮回収法となるであろう。 本年度は,水圏フミン物質の分析化学的研究の一環として,試料前処理(オキシン塩共沈及び加温析出ポリマー″ポリビニルメチルエーテル″による濃縮)におけるフミン錯体の挙動について検討を行い,イオン同様完全に回収できることが分かった。また,酸性雨や酸性排水などの混入による水圏pHの低下を想定し,これに伴うフミン錯体の解離をSephadex A-25(巨大網目構造陰イオン交換体)吸着分離・誘導結合高周波プラズマ質量分析法により調べた。さらに,アノ-ディック・ストリッピング・ボルタンメトリーを用いることにより,フミン錯体の安定性についても検討を行い,有用な知見を得ることができた。
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