研究課題/領域番号 |
08458154
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
環境影響評価(含放射線生物学)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
内海 博司 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (20025646)
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研究分担者 |
田野 恵三 京都大学, 原子炉実験所, 助教授 (00183468)
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研究期間 (年度) |
1996 – 1997
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キーワード | 8-ハイドロオキシグアニン / グルタチオン・パーオキシターゼ / スーパーオキサイド・ディスムターゼ / カタラーゼ / x-rays / Near-UV / mAMSA |
研究概要 |
C3H系マウスの変異種であるカタラーゼ欠損(C3H-Csb)マウスのカタラーゼの役割を検討する目的で、このCsaとCsbマウス胎児の皮膚から培養細胞株を樹立した。過酸化水素の細胞毒性は、細胞内のカタラーゼ活性を反映して、C3H/Csaマウス細胞よりC3H/Csbマウス細胞が数倍高感受性であった。C3H/Csaマウス細胞よりC3H/Csbマウス細胞のほうが、X線に感受性であった。また、近紫外線の刹細胞作用も、C3H/Csaマウス細胞よりC3H/Csbマウス細胞のほうが、感受性であった。 酸化ストレスに対しては、カタラーゼ以外に当然スーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオンベルオキシターゼ等が相互に補間しあっていることから、両マウス細胞について、これらの酵素活性を測定した。C3H/Csaマウス細胞及びカタラーゼ欠損C3H/Csbマウス細胞において、pasage29の細胞内カタラーゼ活性は、C3H/Csaマウス細胞では10.37±0.27U/mg proteinであったが、C3H/Csbマウス細胞では、約1/4ほどの活性であった。一方、スーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオンベルオキシターゼの酵素活性には、両細胞間での差は見られなかった。しかし、細胞内カタラーゼは、C3H/Csbマウス細胞では、passageに依存しなかったが、C3H/Csaマウス細胞では、passage28を越すと減少し、株化すると親株は5.9U/mg白と更に減少し、その差が37%に縮まった。活性酸素の関与が考えられているDNA上の8ヒドロキシグアニン(Oh8Gu)の生成量は、Passage27において、C3H/Csbマウス細胞がC3H/Csaマウス細胞より約3.5倍ほど多い結果を得た。バクテリアにも、ヒトにもカタラーゼ欠損の突然変異細胞が知られている。マウスのカタラーゼ欠損突然変異細胞で観察された現象が、バクテリアからヒトまで、普遍的な現象かどうかを、8ヒドロキシグアニンの生成量と突然変異誘発について検討した。大腸菌のカタラーゼ欠損株は、その親株の野性株に較べて、過酸化水素に対して高感受性を示した。しかしながら、大腸菌のカタラーゼ欠損株の自然突然変異頻度は野性株と比較して有為な差はなかった。またDNA中の8ヒドロキシグアニン量にも有為差はなかった。 少なくとも、当初の目的を達することができた。しかし、本研究を通じて、新らたな問題点も浮かび上がった。1.野性株細胞のpassage数が多くなると、カタラーゼ活性が低下する現象はエイジングと関係しているのかどうか。2.passage数と8ヒドロキシグアニン生成量との関係が見られたが、この8ヒドロキシグアニン自体は、突然変異を誘導するのかどうか。3.抗がん剤であるブレオマイシンや、マイトマイシンCがカタラーゼ欠損株で、なぜ、抵抗性になったのか。など、今後の研究課題として残された。
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