研究課題/領域番号 |
08458156
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
二塚 信 熊本大学, 医学部, 教授 (80040195)
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研究分担者 |
永野 恵 熊本大学, 医学部, 助手 (10136723)
北野 隆雄 熊本大学, 医学部, 助手 (50214804)
稲岡 司 熊本大学, 医学部, 講師 (60176386)
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キーワード | メチル水銀 / 水俣病 / 健康影響 / 自覚症状 / 疫学 / 多変量解析 |
研究概要 |
メチル水銀汚染の観察および汚染地域住民の健康管理を行うため、水俣市に隣接するA町において1980年代から継続的に観察研究を行っている。これまで、肝疾患、動脈硬化、糖代謝異常、腎疾患、生物学的加齢、多愁訴構造などについて、有病率、疫学的特性、メチル水銀汚染との関係について検討してきた。本研究では、水俣病認定患者を含むメチル水銀汚染の影響を受けたと思われる住民の高齢化が進む今日、日常生活動作(ADL)、日常生活支障度あるいは生活の質(QOL)という視点から住民の健康問題を捉える必要があると考え、当該地域住民の日常生活支障度の調査を始めて実施し、当該地域のヘルスニードを把握するとともに、メチル水銀汚染を含めたその要因の検討を行った。 A町で高濃度のメチル水銀汚染を受けたと考えられる漁村地区から2地区、内部コントロールとして農山村地区から2地区を選び、4地区の40歳以上の全住民(男性265名、女性287名)を対象に、英国の人口統計情報局(OPCS)方式により、日常生活支障度を自記式アンケートで調査した。その有効回答率は86.8%であった。 この質問紙法の妥当性を、聴覚支障度について聴力検査成績と対比して検討したところ、有意の正相関(r=0.42)を示したが、質問紙にfalse negativeの存在することも明らかになった。性別・地区別には、男性では視力障害、手先機能障害、手足伸展困難、尿便失禁で、女性ではこれに加えて、会話能力障害、聴力障害で有意に漁村住民の支障度が高い傾向が見られた。因子分析の結果、第1主成分として身体活動障害要因、第2主成分としてコミュニケーション障害要因が抽出され、両因子の得点は漁村部が高く、加齢と共に上昇した。さらに重回帰分析の結果、第1主成分は年齢と地区、第2主成分は年齢と水俣病認定の有無が有意な説明変数となった。これらの結果から、メチル水銀汚染地域住民の健康・福祉の支援に際しては身体活動、コミュニケーション能力の支降に対する視点から一層の努力が必要であると思われた。
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