水界生物のストレス応答と食物連鎖に基づく水環境因子の影響評価

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08458157
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 東京薬科大学
• 研究代表者: 三浦 卓 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (70013323)
• 研究分担者: 松原 チヨ 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (10057309) ; 山形 秀夫 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (20023468) ; 都筑 幹夫 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (70155430)
• キーワード: 生態系 / 水生生物 / クラミドモナス / ミジンコ / ユスリカ / ヒ素 / ストレス応答 / 遺伝子発現

研究概要

水界生態系を構成している生物種について水環境因子に対する応答を総合的に、しかも鋭敏に検出するために、水環境中の化学物質の影響とそれらにより特異的に発現する遺伝子の検索と解析を行うことを目的として以下の研究を開始した。
1.水生生物の耐性濃度の決定
各種の水生生物についてヒ酸への耐性濃度を明らかにした。
1)緑藻クラミドモナスの生育は、1mMでは影響が認められず、10mMで顕著に阻害された。50%致死濃度は、ミジンコに対して0.05mM、水生昆虫ユスリカに対して0.04mMであった。
2)ヒ素を含む培地で培養したクロレラからジメチルヒ素が検出された。このクロレラをオオミジンコに摂食させたところ、ミジンコ体内からトリメチルヒ素化合物が検出され、ミジンコはジメチル体をトリメチル化することが明らかとなった。クラミドモナスでは、取り込まれたほとんどのヒ素が12時間以内にジメチル化された。
2.環境因子により発現する遺伝子の検索
ヒ素に対する耐性株を分離するためにクラミドモナスにArg遺伝子を導入して遺伝子破壊を行ったところ、感受性株6株と耐性株13株を単離出来た。感受性株では、ヒ素の取り込みが高い株とジメチル化が押さえられている株があつた。
ヒ素等のストレスに応答する遺伝子をミジンコについて検索し、ヘモグロビン、ホメオボックスタンパク質等の遺伝子を見いだした。これらの遺伝子のストレス応答が生態系に与える影響の解明を進めている。

研究成果

• [文献書誌] Sato,N.: "Contribution of lowered unsaturation levels of chloroplast lipids to high temperature tolerance of photosynthesis in Chlamydomonas reinhardtii." J.Photochem.Photobiol.36(in press). (1997)
• [文献書誌] Fujiwara,S.: "Circadian expression of the carbonic anhydrase gene,Cah 1,in Clamydomonas reinhardtii." Plant Mol.Biol.32. 745-749 (1996)
• [文献書誌] Sakurai,T.: "Immunotoxicity of organic arsenic compounds in marine animals." Appl.Organomet.Chem.10. 727-732 (1996)
• [文献書誌] Kaise,T.: "Biomethylation of arsenic in an arsenic-rich freshwater environment." Appl.Organomet.Chem.(in press). (1997)
• [文献書誌] Tokishita,S.: "Cloning and analysis of a cDNA encoding a two-domain hemoglobin chain from the water flea Daphnia Magna." Gene. (in press). (1997)
• [文献書誌] Inoue,H.: "Heterologous expression and mutagenesis on activation mechanism and the roles of basic residues in prosegment of aspergillopepsndgen I." Eur.J.Biochem.237. 719-725 (1996)
• [文献書誌] 山形秀夫: "形質導入による解析.「遺伝子操作の基礎技術」" 菜根出版, 17 (1996)