温室効果ガスの分離性の向上にはポリイミドの凝集構造の形成が重要であるが、本年度は特に膜厚に注目し、薄膜作製時の高分子構造と膜厚との相関を検討した。また、高分子膜を気体分離膜として実用化するためには中空糸膜の作製が条件となるため新しい中空糸膜の作製法も検討した。 我々は乾湿式法を用いることにより含フッ素ポリイミドの超薄膜を作製した。膜構造は非対称となり、分離活性機能を有するスキン層(緻密膜からなる薄膜層)と支持体である多孔質層から形成された。気体の透過流量は表面スキン層の膜厚に依存し、得られた含フッ素ポリイミド非対称膜のスキン層は最も薄い層で約10nmを示した。現在報告されている気体分離膜の中では最も薄い高分子膜の作製に成功した。超薄膜が形成された結果、二酸化炭素透過流量は著しく向上し、二酸化炭素の分離回収の条件である透過流量(_>10^3 cm^3(STP)/cm^2 s cmHg)を越えた。また、非対称膜の選択性は緻密膜に比べ増大し、膜厚が薄くなるほど分離性能は向上した。蛍光スペクトル・X線回折の結果から最表面では高分子鎖間での相互作用が増大し薄膜化による凝集構造の促進が確認された。 中空糸膜の作製方法も乾湿式相転換法を用いた。air gap中で中空糸表面に気体分離活性を有するスキン層を形成させた(乾式プロセス)、次にメタノール凝固浴中でスピノ-ダル分解による液体-液体分離を誘起させたあと(湿式プロセス)、中空糸内部にスキン層の支持体となる多孔質層を形成させ非対称構造を有するポリイミド中空糸膜を作製した。このプロセスを連続的に行なうことにより薄い表面スキン層を有する中空糸膜の作製が可能となった。得られた中空糸膜は外径:700um、内径:約500umとなり、外表面は気体分離活性を示す薄膜スキン層、内表面はスキン層の支持体となる多孔質層が形成されていることが確認できた。今後は実用化を目指したモジュールの検討を行なう。
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