1.大腸菌のファルネシル二リン酸合成酵素ヌル変異体においてこれまでに見いだされていなかった新規なプレニルトランスフェラーゼ活性を2種類検出した。これらの酵素の存在量は微量であったが、ヌル変異体の生育において欠損酵素の機能を代替していると考えられた。それらは精製溶媒に界面活性剤を添加することで精製が可能となるなど膜タンパク質様の性質を示したが、性質決定の結果1つはオクタプレニル二リン酸合成酵素であり、もう1つはファルネシル二リン酸およびそれ以上の鎖長を持つプレニル二リン酸を合成していることが分かった。 2.大腸菌内を用いたプレニル二リン酸の生産を目的とし、プレニルトランスフェラーゼの生成物鎖長制御機構の解明を試みた。ランダム変異の導入により中等度好熱性細菌および高度好熱性古細菌のプレニルトランスフェラーゼの生成物鎖長の改変に成功し、その結果プレニルトランスフェラーゼ間には共通に2つのアラパラギン酸リッチな配列が存在するが、そのうち最初の配列から5残基上流に位置するアミノ酸残基が鎖長制御に重要であることを明らかにした。これらはプレニルトランスフェラーゼの生成物鎖長の人為的な制御を可能にした初めての報告である。さらに様々な生物種のプレニルトランスフェラーゼについてその周辺の領域を比較し、その結果に基づいた変異導入を行うことによりプレニルトランスフェラーゼの鎖長制御機構が系統発生学的に区別できることを明らかにした。
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