1.オキシドスクアレン閉環酵素cDNAの大量発現 ラットおよびヒト由来のラノステロール合成酵素全長cDNAをそれぞれイ-ストの発現ベクターに組み込み、ラノステロール合成酵素欠失変異株および野生株のイ-ストを形質転換した。変異株の形質転換体がエルゴステロール非添加培地で生育したことにより活性酵素タンパクの発現を確認した。また野生株の形質転換体よりタンパク画分を抽出し、in vitroで酵素活性を測定し、常在性酵素の約3-4倍の活性を検出した。またこの活性は本来の酵素同様ミクロソーム画分に発現していることも確認した。しかし、SDA-PAGE分析で検出できるほどの発現量はみられず、タンパク化学的研究には更なる大量発現系の開発が必要であり引き続き次年度の課題として検討を行う。エンドウマメ由来のシクロアルテノール合成酵素についても、同様のイ-スト発現系により活性酵素タンパクとしての発現に成功した。 2.生成物制御機構の解析 現在のところ全長cDNAクローンの得られているオキシドスクアレン閉環酵素で、生成物の異なるものは上記ラノステロール合成酵素とシクロアルテノール合成酵素のみである。両酵素のアミノ酸配列を比較するとアミノ酸レベルでは約40%の相同性を示すが、配列の比較からは生成物を制御している残基またはモチーフを推定することは困難であった。両酵素の断片を異なる位置でつなぎ合わせたキメラタンパクを数種デザインし、PCR法によりそれら遺伝子の取得を試みた。これらについては上記イ-ストの発現系でそれぞれの生成物を同定することによりポリペプチド鎖上の生成物を制御している領域をせばめることが可能と考えている。 3.環状トリテルペンを与える植物酵素遺伝子のクローニング 数種の植物からcDNAの取得を試み、オタネニンジン、カンゾウ、ヘチマ、エンドウから、それぞれ同一植物のシクロアルテノール合成酵素と60〜70%の相同性を示すクローンを得ており、現在その酵素機能を上記イ-ストの発現系で検討している。
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