前年度のラット、ヒトからのラノステロール合成酸素およびエンドウマメからのサイクロアルテノール合成酵素cDNAのクローニングの成功の実績をふまえ、オタネニンジン(Panax ginseng)毛状根を材料にPCRによるトリテルペン合成酵素cDNAクローニングを試みた。 1.P.ginseng毛状根からのオキシドスクアレン閉環酵素のcDNAクローニング P.ginseng毛状根より調製したミクロソーム画分にサイクロアルテノール、ダンマレンジオール、β-アミリン合成酵素活性を検出したが、可溶化が困難であったため精製は断念さぜるを得なかった。そこで現在までに知られているオキシドスクアレン閉環酵素間で生物種を超えて比較的よく保存されたアミノ酸配列がトリテルペン合成酵素にも存在することを期待し、縮重入りプライマーを用いるPCR法によりクローニングを試み3種のオキシドスクアレン閉環酵素のcDNAを得た。これら3種類の全長クローンを酵母の発現系で機能解析し、PNXのクローンがP.ginsengのサイクルアルテノール合成酵素を、PNYがβ-アミリン合成酵素をコードしていることを明らかにした。トリテルペン骨格を生成するオキシドスクアレン閉環酵素のクローニングとしてはこれが始めての例である。PNZのクローンはダンマレンジオール合成酵素をコードしていると推測されるものの未だ機能の同定には至っていない。 2.β-アミリン合成酵素とルペオール合成酵素のキメラ酵素の作製およびその解析 最近データベース上報告されたシロイヌナズナ由来のルペオール合成酵素はP.ginsengのβ-アミリン合成酵素と全領域に渡って70%の相同性を示した。これら生成物の作り分けが配列上どの領域に由来するのかを検討する目的で、全長を4分割する制限酵素部位を用いて16種類のキメラ体を作製し反応生成物を解析した。その結果、N末より260番目から340番目のアミノ酸残基の領域が両化合物の作り分けに重要な領域であることを明らかにした。
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