本年度は人工的な遺伝子制御蛋白質を分子設計するため、特異的DNA塩基認識部位としてengrailedホメオドメイン蛋白質のヘリックス-ターン-ヘリックス構造の部分(453から513残基)をコードする遺伝子と、DNAに作用する部分としてヘム蛋白質の一つであるミオグロビンからヘムを保持する部分構造をコードする遺伝子をそれぞれの天然蛋白質の遺伝子から切り出し、別々に発現させ、それぞれの部分構造事態が安定かどうかを検討した。いずれの部分構造をコードする蛋白質の大腸菌内で良好な発現効率を示し、単離することが可能であった。これらの部分構造の遺伝子に融合の際に必要となる制限酵素部位を導入し、融合遺伝子を作製を試みた。しかし、現在のところ、融合した遺伝子のを得ることには成功しておらず、制御酵素部位の改変などを検討している。一方、天然の遺伝子制御蛋白質においても、ミオグロビンのようなヘムを含む部分と、ヘリックス-ターン-ヘリックス構造の部分をもつ蛋白質CooAが発見された。このCooA蛋白質はCO分子がヘム鉄に結合することにより遺伝子制御活性を示すため、本請求の人工的な遺伝子制御蛋白質のモデルとして考えられる。そこで、CooA蛋白質の結合特性についても検討を行ったところ、その結合定数はミオグロビンの場合と大きな変化はないものの、過程は多相性を示し、複数のコンフォーマ-の存在が示唆された。このことは、CooA蛋白質における遺伝子制御活性発現の際の多量体化の挙動とも対応しており、さらに詳細な検討を次年度にわたって検討する予定である。
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