本研究課題では、複合活性をもったキメラ型新規蛋白質について次の2点を中心に研究を行った。 1)天然における複合活性をもったキメラ型蛋白質、CooA蛋白質、の構造解析と機能発現のメカニズム CooA蛋白質はミオグロビン様のヘム結合部位とヘリックス-ターン-ヘリックスのDNA結合部位からなる、天然における複合活性キメラ型蛋白質と考えることができる。そのNMRスペクトルにおいては高磁場側にポルフィリン環の影響と考えられる多くのシグナルが観測され、また、その予備的な2次元NMRの結果からも、ヘム鉄へは従来指摘されていたヒスチジン以外にアルギニン残基あるいはリジン残基の配位が示唆された。一方、機能面からの評価として、配位子でありDNA結合活性を誘起する一酸化炭素の結合特性について検討を行ったところ、見かけ上の結合速度はミオグロビンなどの他のヘム蛋白質類と大きくは変わらないものの、ナノ秒以下の領域での再結合の割合が異常に大きく、ヘム鉄周辺の大きな立体障害が存在することが示された。このことは立体障害の大きな部位に一酸化炭素が結合することにより周辺の蛋白質構造も大きく変化し、その結果、DNA結合部位が形成されるという分子機構を示唆している。 2)モジュール置換を利用したキメラ型新規蛋白質の分子設計 グロビン蛋白質の系統的なモジュール置換により、従来提唱されているモジュールがさらに小さな構造単位「サブ-モジュール」に分割できることを明らかにした。この新たな「サブ-モジュール」のうち、ヘムに配位している近位ヒスチジンを含む20残基程度の領域は「ヘム結合モジュール」としてヘム近傍の構造、とくにヘムの電子状態やヒスチジンの配位構造を決定されることを示した。
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