研究概要 |
コリシンE3のC末端,E3CドメインはRNase活性は弱いが,70Sリボソーム中の16S-rRNAの3'末端から49番目の部位を効率よく切断してリボソームを失活させ,蛋白合成を止めて大腸菌を殺すので,E3Cはリボソームの特別な構造を認識していると思われる.E3生産大腸菌は,E3Cに対する特異的阻害蛋白ImmE3を合成して自殺を免れる.さてCドメインの相同性が高いコリシンE4とE6は,同じく蛋白合成を止めて菌を殺すが,E3,E4,E6生産菌は自分のコリシン以外には感受性で,Imm蛋白による耐性の特異性は高い.本研究では,(1)コリシンの活性中心の検索とリボソームに対する酵素学的解析,(2)コリシンとインヒビターのin vitroの結合特異性の定量化とin vivoの耐性市区異性の関係の解析,(3)コリシン/リボソーム間相互作用とコリシン/Imm間相互作用の関係を解析した. (1)まずE3C,E4C,E6C,ImmE3,ImmE4,ImmE6の発現精製系を確立し,E4CとE6CがE3Cと同じリボソーム部位に作用すること,各Immがそれを阻害することを証明した.E3Cの4種の失活点変異体を精製し,in vitroでも活性が低下しており,特にE517Q変異は全く切断活性がない事を示した. (2)非変性電気泳動のゲルシフトアッセイで,各CドメインとImmとの結合特異性を定性的に調べた.また各CとImmとの結合速度定数,解離速度定数,解離平衡定数を求め,in vivoの耐性特異性がC/T2A間の結合の平衡定数で説明できること,それは解離の速度で決定されていることを示した. (3)E3Cとリボソームとの結合を定量化し,in vivo耐性を与えるImmE3はリボソームより強く,耐性を与えないImmはリボソームより弱くE3Cに結合することを示し,生理現象を定量的に説明し得た.
|