研究概要 |
ミトコンドリアタンパク質の多くは,サイトゾルで合成された後,ミトコンドリア外膜と内膜の膜透過装置の働きで,外膜と内膜を通過して,ミトコンドリア内部に移行する。本研究では,タンパク質複合体であるこれらの膜透過装置の構造と機能の解析を行い,タンパク質のミトコンドリア膜透過の仕組みを明らかにすることを目的としている。 まず,外膜の膜透過装置に関して,酵母細胞内で(His)_6のタグを付けたTom22またはTom40を発現させ,ミトコンドリアを単離,可溶化後,(His)_6に対するアフィニティクロマトにより,Tom22,Tom40,Tom20(受容体タンパク)を含む膜透過装置のコア複合体を単離した。このコア複合体を大量に調製する条件を確立し,現在コア複合体を構成する他のタンパク質を検索中である。 次にミトコンドリアのマトリクスおよび膜間部行きの前駆体の様々な部位に,無細胞タンパク質合成系を用いて,光反応性の非天然アミノ酸残基を部位特異的に導入した。この前駆体を用いて,in vitroでミトコンドリア膜透過反応中間体を生成し,光照射を行うことにより,膜透過中のポリペプチド鎖のどの部分が膜透過装置構成タンパク質とどのように相互作用しているかを解析した。マトリクス行きの前駆体は,非常に伸びたコンホメーション(βストランドなど)で,外膜のTom40,内膜のTim44,マトリクスのSsclpと,相互作用していることが分かった。一方,膜間部行きの前駆体は,伸びていないコンホメーションで,外膜のTom40,内幕の未同定タンパク質と相互作用していることが明らかになった。
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