研究概要 |
真核生物のATP依存性プロテアーゼであるプロテアソームは分子量約200万の巨大の多成分複合体であり、触媒ユニットの両端に調節ユニットが会合したダンベル型粒子である。我々はこれまでのプロテアソームの蛋白質構造と遺伝子構造に関する研究を進め、本複合体の分子的基盤を確立してきたが、本研究では、約50種の異型サブユニット群から構成されたプロテアソーム複合体の構造解析研究を完結することを第一の目標とした。本年度は調節ユニットを構成するサブユニット群のcDNA構造解析を中心的に行い、ATPaseサブユニットとして新たにヒトp42(SUG2:酵母のホモローグ)を、そしてnon-ATPaseサブユニットとしてヒトp112,p97,p58,p55,p44.5,p44,p40.5,p28,p27のcDNAをクローニングして、その塩基配列からこれらのサブユニット群の一次構造を決定した。さらに、これらのサブユニットの機能を解析する目的で、出芽酵母のホモローグSEN3(p112),NAS1(p97),SUN1(MBP1),SUN2(p58)を用いて遺伝学的な機能解析を行った。その結果、これらは全てユビキチン依存性の蛋白質分解機構に関与することが判明したほか、SEN3はモデル蛋白質の核輸送、NAS1は細胞内の情報伝達、SUN2は細胞周期制御に関与していることが示唆された。さらに、SUN1はユビキチン受容体として標的蛋白質の分解識別に関与することも生化学的に同定した。これらのプロテアソームを構成する新たなサブユニット群の分子構造解析とそれらの分子遺伝学的な機能解析の結果から、プロテアソームが、細胞周期・炎症応答・アポトーシス・免疫識別などの多彩な生理機能の発現に密接に関与していることが示唆された。現在、マウスを用いた高等動物での分子遺伝学的な機能解析プロジェクトを立案し、実行中である。
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