研究概要 |
真核生物のATP依存性のプロテアーゼであるプロテアソームは分子量約200万の巨大な多成分複合体であり、触媒ユニットの両端に調節ユニットが会合したダンベル型粒子である。我々はこれまでプロテアソームの蛋白質構造と遺伝子構造に関する研究を進め、本複合体の分子的基盤を確立してきたが、本研究では、約50種の異型サブユニット群から構成されたプロテアソーム複合体の構造解析研究を完結することを第一の目標とした。本年度は調節ユニットを構成するnon-ATPaseサブユニット群のcDNA構造解析を中心的に行い、p55,p44.5,p40.5,p28,p27のcDNAをクローニングして、その塩基配列からこれらのサブユニット群の一次構造を決定した。さらに、これらのサブユニットの機能を解析する目的で、出芽酵母のホモローグNAS2(p27),NAS4(p40.5),NAS5(p55),NAS6(p28),NAS7(p40.5)を用いて遺伝学的な機能解析を行った。その結果、NAS4とNAS5が必須遺伝子であり、NAS2,NAS6,NAS7が非必須遺伝子であることを明らかにした。また、NAS7の欠失は温度感受性増殖を示し、非制限温度下では細胞周期のM期に停止することが明らかとなった。また、NAS7遺伝子産物はユビキチンレセプターのドッキング蛋白質であることも生化学的に固定した。これらのポロテアソームを構成する新たなサブユニット群の分子構造解析とそれらの分子遺伝学的な機能解析の結果から、プロテアソームを構成するサブユニット群の構造-機能相関及びこれらn複合体の分子集合に関する知見が集積しつつある。これらの研究成果は、プロテアソームが示す細胞周期・炎症応答・アポトーシス・免疫識別など多様な生理機能の作用機構解明に大きく寄与すると考察される。
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