カブトガニ(Tachypleus tridentatus)の血球および血漿より、細菌表層成分を認織する新規のレクチン類を精製し、それらの構造と機能解析を行った。タキレクチン-1は、221アミノ酸残基からなり、約40残基の繰り返し配列が6回存在した。タキレクチン-1は、各種細菌を凝集するとともに、リポ多糖(LPS)を表層に持つグラム陰性菌に対して抗菌活性を示した。一方、。タキレクチン-2は236アミノ酸残基からなり、47残基の5回繰り返し配列が存在した。タキレクチン-2は、N-Acetyl基をもういくつかの糖に対して特異性を示し、グラム陽性菌の表層成分であるリポテイコ酸と結合し、かつグラム陽性菌の一種を特異的に凝集したタキレクチン-3およびタキレクチン-4は、ともに大腸菌O111:B4のO抗原多糖に高い親和性があって、リピドAとKDOのみからなるLPSにはまったく反応しなかった。したがって、大腸菌O抗原の特異的糖であるコリトースを認織している可能性が高い。123アミノ酸残基からなるタキレクチン-3はRinderpest virusの血球凝集素の一部と配列類似性を示し、一方、タキレクチン-4は、Xenopus laevisの機能不明の蛋白質であるXL-PXN1のアミノ末端側領域と配列類似性を示した。また、カブトガニ血漿中には、哺乳類の補体系に相当する感染防御系の存在が示唆されていたが、今回、哺乳類のC-reactive proteinと配列相同性のある溶血因子やN-acetyl基に特異性を有するTachylectin-5を精製し、現在、解析中である。また、マックスプランク研究所との共同研究により、タキレクチン-1およびタキレクチン-2のX線結晶解析が完了した。
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