本研究は、申請者らが独自に見いだしたPLCδに結合しかつ活性化する新規タンパク質p122RhoGAPの機能を明らかにすることにより、PLCδの活性化機構や生理的意義の解明を目的とした。本研究の成果は以下の通りである。 1 p122に特異的に結合するタンパク質として、ビンキュリンのほか、55kDa等のタンパク質を検出した。 2 PIP2を介してPLCδとpl22およびビンキュリンが相互作用することが判明した。 3 pl22をSwiss3T3細胞にマイクロインジェクションした結果、アクチン繊維の分断化および接着斑の消失が観察された。 4 pl22を一過的に過剰発現させたところ、発現細胞はラウンドアップし付着性が低下した。この形態変化や付着性の低下現象は、活性型Rho-Val14を共発現させた場合には認められまかった。 5 GAP領域に部位特異的に変異を導入したp122には、形態変化や付着性を低下させる活性は認められなかった。 以上の結果より、p122は細胞内でもRhoGAPとして作用していること、またPLCδおよびビンキュリン等の分子と相互作用しながら形態や接着の制御に関与することが判明した。今後、PLCδとp122との協調メカニズムを明らかにすることにより、細胞運動や癌細胞転移における本情報伝達系の役割の解明が期待される。
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