一般に、血液凝固反応は「内因系」と「外因系」の2つの経路が存在するといわれている。しかし、最近では、組織因子/VII因子を引き金とするビタミンK依存性凝固因子の一連の活性化経路である「外因系」の方がより生理的な反応経路であることが明らかにされつつある。しかし、「内因系」因子とされているIX因子とVIII因子は、その異常が強い出血性素因(血友病AとB)であることから、その生理的重要性は明確であるものの、その臨床症状をin vitroでの実験データやIX因子の旧来のカスケード中での「内因系」という位置付けでは説明できない。また、血液凝固反応にCa2^+が必須であることは広く知られる。一方、Mg2+は血漿中に存在するものの凝固への関与は報告されていない。今回、私たちは血漿中のMg^<2+>イオンがIX因子の高次構造と生理活性に対し重要な役割を果たすことを見い出し、血液凝固におけるIX因子の重要性は今まで考えられていたよりはるかに大きいことを明らかにした。また、今回、血液凝固反応におけるMg^<2+>イオンの関与を考慮し、血液凝固カスケードにおけるIX因子の位置付けを再考慮すると、生理的な凝固カスケードの基本的な流れは組織因子/VII因子→IX因子→X因子→プロトロンビン→フィブリノーゲンの遂次的活性化であると推定した。
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