中枢神経特異的なプロテオグリカン型チロシンホスファターゼであるPTPζの脳形成における役割を明らかにするため、以下の研究を行った。 (1)ノックアウトマウスの作製 PTPζ遺伝子をLacZ遺伝子に置き換えたノックアウトマウスの作製に成功した。本年度は、ヘテロマウスにおけるLacZ遺伝子の発現部位を解析することにより、PTPζ産生細胞の同定を試みた。胎生8.5日目から発生過程を通じてLacZの発現は中枢神経系に限局されており、これまで免疫組織化学法及びin situ hybridization法により明らかにされているPTPζの発現パターンと一致していた。胎生16日目ヘテロマウスの大脳皮質初代培養において、LacZの発現は神経細胞及びグリア細胞の両者に観察され、グリア細胞のみならず神経細胞もPTPζを発現していることが確認された。さらに、生後のヘテロマウスの解析により、大脳皮質錐体細胞、海馬顆粒細胞等、多くの神経細胞がPTPζを発現していることが明らかになった。 (2)PTPζの細胞内基質分子の同定 PTPζの基質分子を含む本分子の細胞内ドメインと結合する分子群を単離・同定すべく、Yeast two-hybrid systemを用いて、ラット脳cDNAライブラリーをスクリーニングしている。現在までのところ、有力な候補クローンは得られていない。
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