赤血球系細胞分化における転写因子およびヘムによる制御機構の解析

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08458188
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 林 典夫 東北大学, 医学部, 教授 (00004606)
• 研究分担者: 古山 和道 東北大学, 医学部, 助手 (80280874) ; 宗像 浩 東北大学, 医学部, 助教授 (90111294)
• キーワード: MafK / Bach因子 / GATA-1 / メロンボポエチン / M-TAT細胞 / 5-アミノレブリン酸合成酵素 / ヘム調節モチーフ / NF-E2

研究概要

赤血球分化に関与する特異的な遺伝情報発現制御機構を解明する目的で研究を進め、下記のような成果を得た。1)造血系で働く転写因子NF-E2ヘテロ2量体の構成成分の一つMafKがp45以外の蛋白質因子との複合体として働く可能性を探るため、GAL4-MafK融合タンパク質を用いた酵母two-hybrid systemでマウスcDNAライブラリーのスクリーニングを行い、MafKとヘテロ2量体を形成する2種類の新しいbZip型転写因子、Bach1とBach2、を同定した。Bach1は多くの組織に広く発現し、Bach2の発現は単球系および神経系細胞に限局していた。機能解析の結果、これらの因子はMafKによる転写の活性化と抑制を調製する上で重要な役割を果たしていることが示唆された。2)トランスジェニック・マウスによる解析から、primitive erythropoiesis と definitive erythropoiesis とでは、GATA-1発現に必要なGATA-1遺伝子転写調節領域が異なることを明らかにした。3)ヒト白血病由来サイトカイン依存性細胞株M-TAT細胞にトロンボポエチン(TPO)受容体(MPL)遺伝子を導入した細胞株(M-TAT/MPL細胞)を作成し、エリトロポエチン(EPO)とTPOの信号によって誘導される転写因子の解析を行った。その結果、M-TAT/MPL細胞ではGATA-1、GATA-2、NF-E2p45、MafKなどの転写因子の発現レベルがTPO刺激以前から上昇しており、TPO刺激による巨核球への分化に際しては、これらの因子に明確な変動が見られず、ETSファミリー因子など別の因子の関与が推察された。4)5-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS)のヘム調節モチーフと呼ばれる領域は、非特異型ALASでは細胞内でもヘムによるミトコンドリア(MT)移行調節に実際に機能していることを実証した。しかし、赤血球型ALASのMt移行はヘム添加の影響をほとんど受けず、ALASイソ酵素間の生理的役割の差異を反映したものと考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Oyake, Tatsuya: "Bach proteins belong to a novel family of BTB-basic leucine zipper transcription factor that interact with MafK and regulate transcription through the NF-E2 site" Mol. Cell. Biol.16・11. 6083-6095 (1996)
• [文献書誌] Onodera, Ko: "Comserved structure, regulatory elements, and transcriptional regulation from the GATA-1 gene testis promoter" J. Biochem.121・2. 251-263 (1997)
• [文献書誌] Nagai, Tadashi: "5-Aminolevulinate synthase expression and hemoglobin synthesis in a human myelogenous leukemia cell line" J. Biochem.121・3. 487-495 (1997)
• [文献書誌] Minegishi, Naoko: "Expression of GATA transcription factors in myelogenous and lymphoblastic leukemia cells" Int. J. Hematol.(印刷中). (1997)
• [文献書誌] Nagai, Mayumi: "Novel regulation of δ-amonolevulinate synthase in the rat Harderian gland" Biochem. Pharmacol.(印刷中). (1997)
• [文献書誌] Furuyama, Kazumichi: "Pyridoxine refractory X-linked sideroblastic anemia caused by a point mutation in the erythroid 5-aminolevulinate synthase gene" Blood. (印刷中). (1997)