研究概要 |
出芽酵母を材料に用い,主に小胞体-ゴルジ体間の小胞輸送における分子選別のメカニズムを解析し,メンブレントラフィックのダイナミズムの制御に関して以下のことを明らかにした. 1,小胞体膜タンパク質の小胞体局在化機構についてさらに研究を進めた.Rer1pは,Sec12pとは全く異なるトポロジーを取るSec71p,Sec63pをも認識し,COPI依存的な経路でゴルジ体から小胞体に送り返すことを明らかにした.また,Sec71pの場合もRer1pに認識される逆送シグナルは膜貫通領域にあり,特定のアミノ酸残基ではなく疎水性残基からなるコア配列の長さが重要であることを示した. 2,RER2とその抑圧遺伝子であるSRT1が,原核生物から高等真核生物に至る巨大な遺伝子ファミリーを形成し,その機能が細胞増殖に必須であることを明らかにした.さまざまな表現型と遺伝子産物の局在性の解析から,細胞内膜系のintegrityに関与することを示唆した. 3,sec12の抑圧変異の原因遺伝子の一つ,RST2をクローン化し,これが酵母のカゼインキナーゼIをコードするHRR25と同一であることを明らかにした. 4,sar1ts変異の抑圧遺伝子EKS1が,小胞体膜タンパク質の安定性に関与すると報告されたHRD3と同一であることを明らかにした.しかし,COPII小胞形成に関わる因子で,EKS1によって安定性が変化するものは見出されなかった.
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