研究概要 |
出芽酵母を材料に用い,主に小胞体一ゴルジ体間の小胞輸送における分子選別のメカニズムを解析し,メンブレントラフィックのダイナミズムの制御に関して以下のことを明らかにした. 1.小胞体膜タンパク質の小胞体局在化機構についてさらに研究を進めた.Rer1pによるSec12pとSec71pの認識には膜貫通領域中の疎水性残基のクラスターとそれをはさむ非疎水性残基の配置が重要であることを明らかにした.また植物のRER1ホモログを同定し,これが酵母rerl変異を相補することを示した.さらに,Emp24pのC末端には,輸送を制御する複数のシグナルが存在することを明らかにした. 2.RER2が,cis-ブレニルトランスフェラーゼをコードしていることを見出した.この酵素が,糖タンパク質の糖鎖合成のキャリアリピド,ドリコールリン酸の形成に必須であることを証明した.さらに,ドリコールの糖鎖合成以外の重要な生理的意義を示唆した.大腸菌のRER2ホモログ(rth)について変異株を作製し,この遺伝子がペプチドグリカン合成のためのキャリアリピド,ウンナカプレニルリン酸の合成に必須なcis-プレニルトランスフェラーゼをコードしていることを証明した. 3.酵母のカゼインキナーゼIであるHn25pのキナーゼ活性の低下がsec12の抑圧に重要であることを示し,Hrr25pが小胞体からの輸送小胞形成を負に制御している可能性を示唆した. 4.sar1ts変異をSEC12,SED4,5'-欠失型SEC16,および,EKS1/HRD3が抑圧することを見出し,これらについて解析を進めた.Ekslp/Hrd3pがタンパク質の分解制御一般に働いているのではないことを示し,Sed4pはSar1p GAPの阻害因子である可能性を示唆した.
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