研究概要 |
出芽酵母を材料に用い、小胞体ーゴルジ体間の小胞輸送における分子選別のメカニズムを中心に、メンブレントラフィックのダイナミズムの制御に関して以下の研究を行った。 1.小胞体から輸送小胞形成におけるSar1GTPaseの機能。SAR1の温度感受性変異の抑圧遺伝子としてEKS1/HRD3とSED4を同定した。いずれもGTPaseサイクルの調節に重要な役割を果たしていることを示唆した。 2.Sar1pのグアニンヌクレオチド交換因子であるSec12pの制御機構。sec12の遺伝子外変異として同定したRST2がHRR25と同一であり、カゼインキナーゼIをコードしていることを見出した。そのキナーゼ活性の低下がsec12の抑圧に重要であることを示す、Hn25pが小胞体からの輸送小胞形成を負に制御している可能性を示唆した。 3.小胞体膜タンパク質の小胞体局在化機構。ゴルジ体の膜タンパク質であるRer1pが、Sec12p,Sec71p,Sec63pを確認して小胞体に送り返す細胞装置であることを証明した。この認識には,膜貫通領域中の疎水性残基のクラスターとそれをはさむ非疎水性残基の配置が重要であることを明らかにした。一方、RER2が、cis-プレニルトランスフェラーゼをコードしていることを見出した。この酵素が、糖タンパク質の糖鎖合成のキャリアリピド,ドリコールリン酸の形成に必須であることを証明した。さらに、ドリコールの糖鎖合成以外の重要な生理的意義を示唆した。大腸菌のRER2ホモログ(rth)について変異株を作製し,この遺伝子がペプチドグリカン合成のためのキャリアリピド,ウンデカプレニルリン酸の合成に必須なcis-プレニルトランスフェラーゼをコードしていることを証明した。
|