まず、好中球上にKLKLLLLLKLK-NH_2に対するレセプターが存在するかどうかを示すために結合実験を行った。そのためにKLKLLLLLKL-NH_2のN末端にチロシン残基を付加した後に^<125>I標識した。このペプチドとヒト好中球より調製した膜分画を用いて結合実験をおこなった。その結果、KLKLLLLLKLK-NH_2に対する特異的な結合が検出された。このことは、好中球膜^2にKLKLLLLLKLK-NH_2に対する特異的なレセプターが存在することを示唆している。この結合は、走化性ペプチドfMLPによってまったく競合阻害されないことからこれまでに報告のない新規なレセプターである可能性がある。そこで、好中球膜上に存在するKLKLLLLLKLK-NH_2に対するリセプターの精製を行った。そのためにヒト好中球膜蛋白を調製後、これをKLKLLLLLKLK-NH_2をレジンに結合させたアフィニティーカラムにアプライし、1M NaCLで溶出をおこなった。その結果、SDS-PAGE上、分子両55kDaのリセプターが精製され、BIA core システムを用いた解析の結果、KLKLLLLLKLK-NH_2に対する解離定数は、約30nMてらあることがわかった。また、百日咳毒素を作用させるとペプチドによる好中球の活性化が阻害されることから、このリセプターはGTP結合蛋白を介して細胞へシグナルを伝達すると考えられた。本研究は、宿主介在型の感染防御を目指した点が独創的であり、今回同定したリセプターは 新たな感染症治療薬を開発する標的分子となることが期待される。
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