研究概要 |
銅アミン酸化酵素は、ヒスタミンやドーパミンなど種々の生理活性アミン類の酸化的脱アミノ反応を触媒し、動植物や微生物に広く存在している。本酵素は、その活性発現に2価銅イオンを必須とするだけでなく、カルボニル性の共有結合型有機補酵素を含有することが古くから知られていたが、その化学的な実体は長らく不明であった。1990年になって、この補酵素の構造が決定され、新規なキノノイド補酵素、2,4,5-トリヒドロキシフェニルアラニルキノン(トパキノン)であることが明らかにされた。その後、トパキノン補酵素は、酵素タンパク質の遺伝子中ではチロシン残基としてコードされていることから、細胞内で不活性な前駆体タンパク質として翻訳されてからトパキノンを含有する活性型に変換されると推定されてきた。本研究では、これまでにコリネ型細菌の一種、Arthrobacter globiformisからフェニルエチルアミン酸化酵素およびヒスタミン酸化酵素遺伝子にクローニングを行い、両酵素の全一次構造を明らかにするとともに、大腸菌内での高発現系を構築した。さらに、銅とトパキノン補酵素を含まず不活性な前駆体型酵素(アポ酵素)を2価銅イオンとインキュベートすることにより、特定のチロシン残基からトパキノンが自己触媒的に生成することを明らかにした。また、ESRやCDなどの各種分光学的方法を用いてこのトパキノン生成過程を詳細に解析し、2価銅イオンがアポ酵素と結合することによって1価に還元されること、この1価銅イオンによって分子状酸素が活性化され前駆体チロシン残基が酸化修飾されること、またその過程でセミキノンラジカル中間体が形成されることを明らかにした。一方、トパキノンに変換される前駆体チロシン残基周辺のコンセンサス配列の役割を明らかにするため、部位特異的変異導入法を用いて各アミノ酸残基を他のアミノ酸に置換した変異型酵素を作製し、それらのトパキノン生成速度や触媒活性を検討した。その結果、コンセンサス配列中の各アミノ酸残基は、活性部位の正しいコンフォメーション維持などに重要な役割を担うことが明らかになった。
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