G蛋白質はα、β、γの3つのサブユニットから成り、βとγは生理的条件下では常に結合して存在し、いろいろなサブタイプの組み合わせの複合体を形成している。これまでの研究結果から、βγの機能的な差はγによって決定されていると考えられている。本研究は、γの違いによるβγの機能的な差異を調べることにより、γの分子多様性の生理的意義を明らかにすることを目的にし、本年度は次のような成果を得た。1)γ^3とγ^<12>に対する抗体を用いて、脳におけるこれらのγの局在を免疫組織化学的に調べたところ、γ^3は神経細胞に、γ^<12>はグリア細胞の一部にそれぞれ特異的に存在することが明らかになった。培養細胞で検討すると、γ^3は神経細胞性のPC12細胞にのみ存在し、γ^<12>はグリオーマ細胞のC6やGA-1に高濃度存在しており、組織での局在とよく一致していた。2)Swiss 3T3線維芽細胞には主にγ^5とγ^<12>が存在するが、これらのγサブユニットに対する抗体で免疫染色すると、γ^5はfocal adhesionに、γ^<12>はストレスファイバーに一致して存在していた。粗細胞骨格標品から調整したF-アクチン画分にγ^<12>が含まれていることより、γ^<12>はF-アクチンに結合していることが明らかになった。このような各γサブユニットの異なる局在はそれぞれのγの機能の違いを示唆していると考えられる。3)γ^<12>はプロテインキナーゼCによりリン酸化され、そのリン酸化部位はN末端の2つのセリンのどちらかであることすでに明らかにしている。今回、両部位にそれぞれリン酸基を導入したペプチドを合成して抗体を作製したところ、N末端のセリンがリン酸化されたペプチドに対する抗体がリン酸化γ^<12>を認識した。したがって、プロテインキナーゼCによるリン酸化部位はN末端セリンであると結論される。
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