G蛋白質はα、β、γの3つのサブユニットから成り、βとγは生理的条件下では常に結合して存在し、いろいろなサブタイプの組み合わせの複合体を形成している。本研究は、γの分子多様性の生理的意義を明らかにするため、γの違いによるβγの機能的な差異を検討し、次のような成果を得た。1.γ12のプロテインキナーゼCによるリン酸化部位はSer-2であることを明らかにした。2.γ12は線維芽細胞内で増殖因子などの刺激によりリン酸化されること、また、ラットの組織中にもリン酸化γ12が存在することを見いだし、リン酸化が様々な刺激で常に細胞内で起こっていることを示した。3.線維芽細胞において、γ12の一部がFアクチンと結合していることを見いだした。同じ細胞において、γ5は接着斑に存在するすることから、これらのγは異なる機能を持つことが示唆された。4.細胞内における各γの機能的差異を調べるため、NIH3T3細胞にβ1と各種γを共発現させた。γ12を強発現した細胞の多くは丸くなったが、γ2、γ5、およびγ7を同程度に強発現させた細胞では、ほとんどそのような変化はみられなかった。5.各種βγを発現させた細胞の走化性を調べると、γ12を発現させた細胞のみ走化性が有意に上昇した。6.γ12のN末端を除去したり、リン酸化部位のセリンをアラニンに置換したγ12を発現すると、細胞の形態変化や走化性の上昇が起こらなくなることより、γ12特異的な細胞の変化はリン酸化によって起こっていることが明らかになった。7.脳においてγ3は神経細胞に、γ12は一部のグリア細胞に存在することを示した。8.これまで、蛋白質が同定されていなかったβ4サブユニット蛋白質を、ウシ肺から精製したβγ5フラクション中に見いだした。β4はγ5およびγ12と選択的に結合することを明らかにした。
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