立体構造既知のタンパク質のすべてをモジュールに分解し、モジュール境界と遺伝子上のイントロンの位置との対応を統計的に調べ、モジュール境界とイントロンの対応がタンパク質に普遍的に成り立つ事実であることを明らかにすることが本研究の目的である。最終年度である今年度は以下の成果が得られた。昨年度に完成したモジュール全自動同定法を使って、立体構造が既知であって原子座標が公開されているすべてのタンパク質をモジュールに分解した。モジュール境界とイントロン位置との対応を調べるためには、モジュールの正確な同定法の開発が必須であるが、特にタンパク質の両末端のモジュール境界の同定の精度が向上した。最終的に50を越える多数のタンパク質について、モジュール境界とイントロンの位置情報から、両者が統計的に有意に相関していることを示すことができた。この結果は、モジュールとエクソンの相関が特殊なタンパク質において成り立つのではなく、タンパク質に普遍的に成り立つ事実であることを示している。特に、細胞壁の糖分解酵素であるキシラナーゼにおいては、この酵素単独でも、モジュール境界とイントロン位置が有意に相関していることがわかった。興味深いことに、基質結合部位は数個のモジュールに局在していた。キシラナーゼの遺伝子でイントロンを持つものの多くは焼酎酵母やマッシュルームなど人の生活に有用な真菌類由来であり、基質特異性を決めるモジュールの両端にイントロンが存在していた。この結果はイントロンを介在者として、基質特異性がモジュール交換によってもたらされた可能性を示している。タンパク質の機能の多様化を生む分子メカニズムとして、エクソンかき混ぜが人為的に選択された可能性がある。結論として、モジュールとエクソンがタンパク質に普遍的に成り立つこと、タンパク質の機能部位がモジュールに局在することを示すことができた。
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