光レセプターの機能発現・制御機構の動的解析

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08458210
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 七田 芳則 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60127090)
• 研究分担者: 寺北 明久 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (30212062)
• キーワード: 視覚 / 桿体 / 錐体 / 光受容蛋白質 / G蛋白質 / 変異蛋白質 / 低温スペクトル法 / 生化学的手法

研究概要

我々は、ロドプシンのN末端から122番目に位置するグルタミン酸残基を、緑および赤感受性錐体光受容蛋白質がもつ残基(グルタミン、イソロイシン)に置換すると、ロドプシンの性質がそれぞれの錐体光蛋白質の性質に変化することを発現した。そこで、今回、緑感受性錐体光受容蛋白質の122番目の残基をグルタミン酸に置換した変異蛋白質を新たに作成し、この変異体がロドプシンの性質を示すかどうかを検討した。その結果、確かにこの変異体はロドプシンの性質を示すことが確認された。また、この位置に存在するアミノ酸残基が、どのような機構で光受容蛋白質の性質を決定しているかを検討しているために、122番目をいろいろな残基に置換した変異ロドプシンを作成して検討した。その結果、ロドプシンの性質を示すにはこの位置の残かかカルボキシル素をもっていることが必須であることがわかった。さらに、光を吸収したロドプシンおよび錐体光受容蛋白質がG蛋白質を活性化する能力が122番目の残基の置換によって入れ替わるかどうかを検討したところ、確かに入れ替わることがわかった。以上の実験により、122番目の残基がロドプシンと錐体光受容蛋白質の分子的な性質およびG蛋白質を活性化する能力を決定していることが証明された。これらの実験と平行して、青感受性錐体光受容蛋白質の光反応過程を検討し、これまでに行った赤および緑感受性錐体光受容蛋白質と比較検討した。その結果、ルミ中間体までは元の蛋白質の吸収極大の違いに対応した吸収極大の違いを示すが、メタI中間体以降では同じ吸収極大を示すことがわかった。この結果から、メタI中間体の生成過程で蛋白質部分の大きな構造変化が起こり、発色団と相互作用しているアミノ酸残基が元の蛋白質と異なることがわかった。

研究成果

• [文献書誌] D.Kojima: "Mol;ecular properical mutants of gecko blue abd bovine rhodopsin." Biochemistry. 35. 2625-2629 (1996)
• [文献書誌] H.Kandori: "Real-time detection of 60-femtosecond isomerization in a rhodopsin analog containing 8-membered-ring-retinal." J.Am.Chem.Soc.118. 1002-1005 (1996)
• [文献書誌] Y.Imamoto: "Structure around C6-C7 bond of the chromophore in bathorhodpsin : Low-temperature spectroscopy of 6s-cis-locked bicyclic rhodopsib abalogs" Biochemistry. 35. 6257-6262 (1996)
• [文献書誌] Y.Imamoto: "Chromophore configulation of iodopsin and its photoproducts formed at low temperatures." Biochemistry. 35. 14599-14607 (1996)
• [文献書誌] H.Imai: "Single Amino Acid Residue as a Functional Determinant of Rod and Cone Visual Pigments." Proc.Natl.Acad.Sci.USA. (印刷中).
• [文献書誌] R.Akiyama: "Analysis of temperature dependence of femtsecond excited state dynamics of bacteriorhodopsin by spin-boson model." Chem.Phys.Lett.256. 165-171 (1996)
• [文献書誌] 七田芳則(分担執筆): "生物物理から見た生命像4「感覚情報-生物の巧みなシグナルのやり取り」" 吉岡書店(印刷中),