タンパク質内電子移動の最適化のメカニズムを以下の系を対象に検討した。(1)内部のキノン分子を取り替えた植物光化学系IとIIの光合成反応中心タンパク質。(2)緑色硫黄細菌の光合成系。(3)Zn-バクテリオクロロフィルを使う新型紅色光合成細菌。(4)近赤外光を吸収しクロロフィルdで酸素発生するシアノバクテリア型光合成。これまでに知られた光合成では、中心金属としてMgを持つクロロフィルaやバクテリオクロロフィルaが必須とされてきたが、我々は(1)タンパク質がクロロフィルの位置を固定し、反応環境を調整することで、励起状態や電子移動を最適化していることをキノン置き換え実験で明らかにした。さらに新発見の光合成系で(2)MgでなくZnを中心金属に使うクロロフィルでも光合成が可能なこと。(3)既知のシアノバクテリア-植物型光合成に比べ、90%の光量子エネルギーで同様な光合成を可能としているクロロフィルdを使う光合成を初めて示した。光合成の入力と出力エネルギーは反応効率をあまり損なうことなく調節可能であることがわかった。我々の知見は光合成のような生体タンパク質内反応系が、多様で高い自由度をもちつつ、しかも物理化学法則を満たす形で進化のなかで最適化されてきたことを示している。しかもこの最適化はあまり大きな蛋白構造変化を伴うことなく、クロロフィルやキノン分子周辺の微細構造を変えたことで達成されたことが明らかになった。
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