研究概要 |
われわれは、哺乳類に特徴的な遺伝子発現機構であり、哺乳類の個体発生、成長、行動に重要な役割を果たしているゲノミック・インプリンティング現象の全貌を明らかにし、その生物学的な意義を明らかにするために、この現象の支配下にある体系的にプリンティングの分離を行っている。父親由来のゲノムのみから発現する遺伝子群(Peg,Paternally expressed genes)の分離には母親由来のゲノムのみを持つ雌性単為発生胚と正常受精胚との間で、これとは逆に母親由来のゲノムのみから発現する遺伝子群(Meg,Maternally expressed genes)の分離には父親由来のゲノムのみを持つ雄性単為発生胚と正常受精胚との間でサブトラクションを行っている。われわれは極微量の生物材料から遺伝子のサブトラクションを行う新しい実験法を確立し、これまでにPeg遺伝子群として、Peg1-8の8個の遺伝子の分離に成功している。そして、実際にこれが父親由来のゲノムのみから発現することを証明した。また、この方法をさらに改良しMeg遺伝子のスクリーニングを行い、すでに候補として現在10以上の遺伝子を分離している。 このようにインプリンティング遺伝子を多数分離することにより、インプリンティング遺伝子に共通する生化学的機能や、胎児における遺伝子発現の共通性等を直接検討できる基盤が整い、これまでゲノミック・インプリンティング現象の生物学的な意義に関して提出されている種々の説に対する正当な評価がなしうると考えている。また、これらの研究はゲノミック・インプリンティング遺伝子群の発現調節にかかわる分子機構の解明につながると考えている。
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