mRNAの核から細胞質への輸送過程は、真核生物の遺伝子発現において極めて重要な一段階であるが、その機構には未だに不明な部分が多い。我々は、mRNA核外輸送の分子機構を明らかにすることを目的として、遺伝的操作が行いやすく、かつ、高等真核生物との類似点の多い分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)の温度感受性致死変異株バンクの中から、mRNAの3'末に存在するポリA部分にハイブリダイズするoligo dTをプローブに用いたin situ hybridizationによるスクリーニングを行い、制限温度下にシフトするとmRNAの核から細胞質への輸送が阻害される温度感受性変異株7株(ptr1〜ptr7)を同定した。更に、分裂酵母の遺伝子ライブラリーを用い、それぞれの変異について機能相補する野生型遺伝子を分離した。その結果、ptr1^+はubiquitin ligase E3様因子、ptr2^+は細胞周期制御に関与するRCC1遺伝子(Ran/TC4のguanine nucleotide exchange factorをコードする)の分裂酵母での相同遺伝子、ptr3^+はubiquitin activating enzyme E1 因子、ptr4^+は染色体分離に関わるCut1p、ptr6は転写因子TAFII55相同因子をそれぞれコードしていることが明らかとなった。ptr5^+とptr7^+は新規な因子をコードしていた。これらの結果から、ユビキチン化システムがmRNAの核から細胞質への輸送過程において、極めて重要な役割を担っていること、及び遺伝子の転写や細胞周期制御などの細胞内諸反応機構と、mRNA核外輸送機構との間に密接な関連性が存在することが示唆された。
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