1 試験管内翻訳系と哺乳動物培養細胞発現系において、アンチザイムのフレームシフトを促進するmRNA上のシス配列を解析した。先に欠失変異実験から示唆されていた約2倍のシフト促進効果を持つ上流のシス配列を置換変異体を用いて検討したところ、シフト部位の14塩基上流を中心とする約9塩基からなるGCに富む配列に主な活性があり、RNAの二次構造をとって作用するのではないこと、シフト部位との距離が重要であることが判明した。また、アンチザイムのシフト部位と他のフレームシフト配列を入れ替えたキメラ体の解析より、アンチザイムmRNA上のシス促進配列(下流のシュードノット構造および上流の促進配列)はマウス乳癌ウィルスgal-pro遺伝子の-1フレームシフトおよび大腸菌翻訳終結因子2(RF2)の+1フレームシフトにも促進効果を示し、特にRF2のシフト部位はアンチザイムシフト部位のコンテクストに埋め込まれると哺乳動物翻訳系においても20%を越える効率でフレームシフトを引き起こした。 2 融合シストロンを利用したフレームシフト検出ベクターにチミジンキナーゼプロモーター+ブラストサイジンデアミナーゼ遺伝子を組み込み、一過性発現系から安定トランスフェクション系に変更した。今後tetOを利用した誘導可能な安定トランスフェクション系に発展させ、応用範囲の拡大をはかりたい。 発芽酵母発現系においてラットアンチザイムmRNAが引き起こすフレームシフトは、動物におけるものと異なる-2フレームシフトであることを報告したが、分裂酵母Schizosaccharomyces pombeを用いて検討したところ動物と同じ+1フレームシフトが主であることが判明し、ポリアミン依存性のフレームシフト検出系の構築は分裂酵母で作成した方が有利と考えられた。
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