1 アンチザイムの変異体mRNAのフレームシフトに対するポリアミンの促進効果を、培養哺乳動物細胞発現系において測定した。その結果、mRNAのシス促進配列(下流のシュードノット構造および上流のGCに富む配列)を欠く変異体もポリアミンの促進を受けること、シフト部位の変異ではシフト効率の高い変異体ほど強い促進を受けることが明らかになった。また、アンチザイムmRNAのシフト部位を他のリコーディング信号に置換したキメラ体の中では、大腸菌翻訳終結因子2(RF2)の+1フレームシフト部位と、マウス白血病ウィルスのgag-pol間のUAGリ-ドスルー部位に対してポリアミンが促進効果を示した。一方、マウス乳癌ウィルスのgag-pro間の-1フレームシフト部位にはポリアミンの効果を認めなかった。 2 鳥類(ニワトリ)と魚類(ゼブラフィッシュ)のアンチザイムcDNAをクローニングした。ゼブラフィッシュでは発現パターンの異なる2種のアイソフォームが存在し、いずれのmRNAもポリアミン依存性のフレームシフトによって翻訳されることを試験管内で確認した。これらと、すでに明らかにした哺乳類、両生類のアンチザイムcDNAの配列データより、シス促進配列を含むシフト部位近傍の塩基配列が脊椎動物を通じて顕著に保存されていることが判明した。 3 種々のポリアミン誘導体のアンチザイムフレームシフトに対する効果を試験管内で検討し、シフトを促進または抑制する誘導体をそれぞれ見出した。シフトを促進する一部の誘導体は、ポリアミンの細胞増殖支持効果を有さずにアンチザイムを誘導して細胞のポリアミン含量を低下させることがわかっており、抗増殖薬としての応用が期待される。現在、融合シストロンを利用した安定発現系において誘導体の効果を確認中である。
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