1. アンチザイムmRNAのフレームシフト部位下流のシュードノット構造および上流のGCに富む領域が促進信号であることを、試験管内翻訳系と哺乳動物培養細胞発現系の両方で確認した。上流の促進配列は伸長中のリボソームと相互作用することが示唆された。これらのシス配列は、ウィルスのフレームシフト部位と組み合わせても促進効果を示した。しかし変異解析の結果、ポリアミンのフレームシフト促進効果は、これらのシス配列との相互作用を介するものではないことが判明した。大腸菌翻訳終結因子2(RF2)の+1フレームシフトやウィルス由来のリードスルーなど、終結コドンの位置で起きるいくつかのリコーディング現象もポリアミンの促進を受けた。一方、翻訳終結そのものがポリアミンで抑制される可能性に対しては否定的な結果が得られ、ポリアミンと直接相互作用する部位の決定は今後の課題として残された。 2. 指示遺伝子安定発現細胞における検討より、細胞内でフレームシフトを促進するのは細胞成分と結合していない遊離ポリアミン画分であることが示された。 3. アンチザイムフレームシフトに促進的または抑制的にはたらく化合物を数種ずつ見出した。促進物質のひとつアグマチンは細胞内ポリアミンの減少による抗増殖効果を示した。またポリアミンと競合してフレームシフトを抑制するジアミン誘導体はポリアミン相互作用部位の検索に有用と考えられた。 4. 鳥類や魚類のアンチザイムcDNAを単離すると共に、新たなアンチザイムのアイソフォームの機能解析を行い、アンチザイムとそのフレームシフトが分子進化的にかなりの広がりを持つことを明らかにした。 5. アンチザイムフレームシフトに関与するトランス因子の遺伝学的スクリーニングには分裂酵母Schizosaccharomyces pombeが適していることを明らかにし、ポリアミン依存性のフレームシフト測定系の構築を開始した。
|